学生時代の経験を社会で活かす

 永年、新卒採用を担当していると、学生の皆さんがもっと自らの人生経験を仕事のイメージと紐づけて語って欲しい、と思うことがよくあります。エンジニアなど特定の専門領域を除いては、それを語ることができる学生は非常に少数派ではないでしょうか。実は幼少期を含めた20年余りの経験値は学生の皆さんが思うよりもずっと社会で活きるものなのです。にもかかわらず巷の就職情報をもとに付け焼き刃で慣れない受け答えに終始してしまう姿を見ていると、とても残念に思います。もっと自然に過去に積み重ねてきた経験を語ってほしい、いつもそう感じてしまいます。とはいえかくいう私も若かりし頃は学生時代の学びと社会で必要とされる知見や能力は当然、別物と考えていたのですが・・。

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「自律」へのアプローチ

自らを律することは、社会、組織で生きていくうえでとても大切なことですが、とても奥深く残念ながらまだシンプルに本質的な定義ができるには至りません。突き詰めると非常に哲学的になり過ぎてしまうでしょうし、短絡的に考えれば机上の空論になってしまう気がします。今の私に実践的かつ的を射た表現をするインテリジェンスはないのですが、一方で社会人として長く会社という組織で働く過程で自分なりに自律を目指し若い頃から意識してきたことがありますので、今回はそれをご紹介したいと思います。

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私の座右の銘「ネアカであれ!」

「ネアカであれ!」とは、私が新卒で入社したソニーの入社式において創業者(当時社長)の盛田昭夫氏が語られたメッセージの1つです。その年に限らず毎年毎年、新入社員に向けて語られていたメッセージですので、盛田さんはこの言葉にソニーとしてのとても大切な意味を込められていたものと推察します。入社式当日、私はこのメッセージを軽く聞き流してしまっていたのですが、その後の3か月に及ぶ新人研修を通じ同期と一緒に過ごすうちに、あらためて「ネアカであれ!」との盛田さんの言葉が思いおこされ、そしていつの間にか私の心の中に一抹の不安を抱かせる、そんな位置づけとなってしまったのでした。端的に言えば同期の多くは非常に明るく元気な面々がそろっていて、話はとても面白く行動もアグレッシブ、いつも公私ともに彼らが場を盛り上げてくれていたのですが、その中で、私自身は彼らほど明るくない、つまり「ネアカでない」と感じてしまい、この先、ソニーの中で頑張っていけるのか不安になってしまったのでした。学生時代、少なくとも普通にはコミュニケーションできると思っていたのですが、ソニーの同期の能力的な面はもとより各々が持つエネルギーレベルの高さに面食らったというのが正直なところでした。

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