成長ステージ(創業期~成長期)に応じたバックオフィスの組織づくり
今回は企業のバックオフィスに関して、成長ステージ(創業期~成長期)に応じた組織体制やオペレーション上の留意点について、私がかつて複数の企業を人事として渡り歩く中で経験してきたポイントについてコメントしたいと思います。フロントサイド(事業側)の組織には、その事業固有の要件があり各社で目指す方向性が異なりますが、バックオフィスに関しては概ね共通項で括れる部分が多く、それらを社員数を軸に組織体制(人員配置)、人材要件、業務(インフラ)の観点で整理してみます。
人事と政治性
人事は社内マーケティング?
人事は社内マーケティングである。よく耳にする考え方であり、確かに社員を顧客と見たてればマーケティングと思えることは多々あります。実はその昔、私も一理あると自らもそのように語っていた時期がありました。ただ最近はその似て非なる部分について、きちんと意識しておかないと、マーケティング的な視点でよかれと思った取組みが、実は想定外に人や組織にネガティブな影響を与える、もしくはダメージの蓄積をもたらすことがあると慎重に考えるようになってきました。
人事にとっての「戦略」と「セオリー」
今回は「戦略」とは何ぞや、といった一般的なお話しするものではなく、昨今、人事戦略という言葉を人事の方々が日常的に語られる中、私が感じていることをコメントさせていただきたく思います。
私は以前、リクルートさんが主宰される人事中堅担当者向けの講座で1コマお話しさせて頂いたことがあります。参加者の方々は非常に有名な企業に所属されている次代を担う優秀な方ばかりでした。私は出席者の皆さんのことをよく理解したうえで講座に臨もうと、事前に自社の事業戦略と人事戦略を提出してもらうようお願いしました。提出された事業戦略は各社の特徴がよく現れておりとても興味深いものでしたが、一方で人事戦略については驚くほどに似通っており、正直、一見しただけでは各社の違いがよく見えてきませんでした。講座の当日、出席者の方々に社名をマスクし、提出いただいた人事戦略についていずれの会社のものか、問いかけてみたところ、ほとんど正解は得られませんでした。。
人事のプロは「経営のメカニズム」を熟知する
経営に貢献する人事を目指すうえで、認識しておくべき要素の1つに「会社のメカニズム」があります。言うまでもなく会社とは社長や社員が個々に独立して動くのではなく、一定のルールや役割に則り組織をなして動くものですし、また組織の規模が大きくなればなるほどその仕組みはより複雑なものへと変化していきます。人事としても様々なアクションを具現化するため、適切なタイミングで適切な人や組織のコンセンサスを得ながら物事を進めていかなければなりません。
「コンフリクトのマネジメント」
「人事はコンフリクトのマネジメントを意識すべき」、この言葉はベネッセ時代、当時の社長からいただいたものです。ちょうど会社が経営変革を目指し様々な取り組みを行う中、当時人事部長であった私の至らなさゆえのお叱りの言葉でした。この言葉を耳にしたとき、私は従来の価値観を根底からくつがえされるほどのインパクトを受けました。といいますのも、それまで人事という立場は誰とでもうまくやっていかなくてはならない、よって対人関係のスタンスとして、コンフリクトを回避する、ということが私の行動の起点になっていたからです。
人事の顧客は「経営・事業・社員のトライアングル」
私が人事の職に就いたのは1990年代初めでしたが、当時、人事の顧客認識は経営と社員の2軸で考えていればよかったように思います。ソニーには組合がありましたが、まさに労使交渉という経営と社員(組合)間の調整が人事部の大きな役割の1つであったように思います。
「熱き心」と「論理性」
「熱き心」と「論理性」は、著名な経営者三枝匡氏が提唱する経営人材の要諦ですが、個人的にはこれほど経営リーダーに必要な要素を端的に示したものはないと思っています。三枝氏が率いたミスミでは幹部社員を中心に三枝氏直々に指南する経営塾への参加が必須となっていましたが、そのプログラムは幾多のリーダー研修とは一線を画し非常に奥が深くかつきわめて実践的なもので、このプログラムに魅力を感じミスミに入社される方も多々いらっしゃるほどでした。その内容そのものについては、三枝氏の著書「V字回復の経営」や「戦略プロフェッショナル」、その他ハーバードビジネスへの寄稿記事など多くの書籍やメディアに取り上げられておりますので、ぜひそちらをご覧いただきたいと思います。
経済は文化のしもべ
この言葉はベネッセ時代にお世話になった福武総一郎氏の言葉です。福武さんは非常にビジョナリーな方で、独特の表現を用いてコミュニケーションされることも多く、意図されたことをすぐに理解できないこともありましたが、その中でもとくに理解しきれずにいたメッセージが「経済は文化のしもべ」でした。福武さんは非常にアートに造詣が深い方でご自身で美術館をつくられたり様々な芸術活動に積極的でいらっしゃいましたので、ビジネスよりアートのほうを尊重していらっしゃるのかな・・など、当時は非常に失礼な解釈をしてしまったこともあります。 “経済は文化のしもべ” の続きを読む