成長ステージ(創業期~成長期)に応じたバックオフィスの組織づくり
今回は企業のバックオフィスに関して、成長ステージ(創業期~成長期)に応じた組織体制やオペレーション上の留意点について、私がかつて複数の企業を人事として渡り歩く中で経験してきたポイントについてコメントしたいと思います。フロントサイド(事業側)の組織には、その事業固有の要件があり各社で目指す方向性が異なりますが、バックオフィスに関しては概ね共通項で括れる部分が多く、それらを社員数を軸に組織体制(人員配置)、人材要件、業務(インフラ)の観点で整理してみます。
人事と政治性
人事は社内マーケティング?
人事は社内マーケティングである。よく耳にする考え方であり、確かに社員を顧客と見たてればマーケティングと思えることは多々あります。実はその昔、私も一理あると自らもそのように語っていた時期がありました。ただ最近はその似て非なる部分について、きちんと意識しておかないと、マーケティング的な視点でよかれと思った取組みが、実は想定外に人や組織にネガティブな影響を与える、もしくはダメージの蓄積をもたらすことがあると慎重に考えるようになってきました。
人事が創る採用力
採用は人事にとってとても重要な領域ですが、昨今、リクルートさんのように採用をビジネスとして手掛ける会社が増えてきたこともあり、人事で採用に携わる人のアプローチが、最初からどこのエージェントさんにお願いするのか、どこに提案をしてもらうか、というところからスタートするのが当たり前になってしまっているようで気になります。本来はまずは自ら自社に必要な人を見定め、採用マーケットの状況を鑑みた上であるべき採用について考えるものだからです。ただこう言ってしまうと今度は人材要件をきちんと定めましょう、基準(コンピテンシー)やペルソナを設定しなくては、、といった話になってしまいます。もちろん正しいのですが、いきなりそのステップに入るのは私としては何か少し本質から外れているように感じられてしまうのです。
人事の顧客は「経営・事業・社員のトライアングル」
私が人事の職に就いたのは1990年代初めでしたが、当時、人事の顧客認識は経営と社員の2軸で考えていればよかったように思います。ソニーには組合がありましたが、まさに労使交渉という経営と社員(組合)間の調整が人事部の大きな役割の1つであったように思います。
人事で働く人の使命
私の考える人事で働く人の使命は「社員の人生を背負い、会社の命運を握る」です。言うまでもなく、重要かつ責任の重い仕事です。まずはこれを受け止める覚悟や気概なくして、よき人事の仕事はできないでしょう。極論ですがこれさえあれば、これさえブレなければ、必ずよき仕事ができるでしょうし、このような意識を持った人の集まりであれば、自ずと信頼される人事、存在感のある人事、強い人事になっていくことでしょう。そうです、人事に携わる人は社員の人生を背負っていますし、私たちの意思決定、行動如何によって、社員の人生は間違いなく大なり小なりの影響を受けてしまうことは紛れもない事実です。決して重荷を背負うべきと言うつもりはありませんが、自らの影響度の大きさは認識しておくべきと思います。
人事のすすめ
人事のプロになる、そう志してからすでに私の人事経験もすでに30年を超えるに至りました。 人事という仕事に向き合い、がむしゃらに毎日を過ごし、ひたすらに経験を積み重ねてきましたし、 同時に成長のためには理論と実践のバランスが肝要、と人事に関する本もむさぼるように読んできたものです。 多くの名著に出会い、多くを学ばせていただいたが、不思議なことに私がこれまで出会った 経営者や上司、先輩諸氏から直接受けた薫陶、心に響いたこと、痛感させらたこと、慚愧の念に至らしめられたこと、などが記してある人事関連の書に出会うことは 不思議と少なかったように思います。